ヴァニタス
武藤さんも目を覚ましたようだった。

「――ああ、おはよう」

寝起きのせいでさらにしゃがれている声で武藤さんが言った。

「――おはようございます…」

私は武藤さんにあいさつを返した。

いつもと同じことに、少しガッカリしてしまっている自分がいた。

武藤さんは私の肩に置いていた自分の手を離した。

あっ、離れちゃった…。

仕方ないか…。

でも一晩だけだったけど、武藤さんに抱きしめられて嬉しかった。

武藤さんは躰を起こした。

「よく眠ったなー」

武藤さんはうーんと両手をあげて伸びをした。
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