ヴァニタス
「果南ちゃん、どうしたの?」

変な風に思われちゃった…。

でもあんなことをされた後で、いつも通りに振るまえって言う方が間違っていると思った。

名前を呼ばれて、キスされて、抱きしめられて…。

それらのことを武藤さんにされた私は、ますます好きになって、心臓もドキドキと鳴っててうるさくて…。

「す、すみません…!

散歩に行ってきます!」

「えっ、今から!?」

武藤さんの声を無視するように私はその場から逃げ出した。


散歩と言う言い訳は、我ながら古典的過ぎると思った。

「――武藤さん、私のことを変に思ったよね…?」

赤くなった顔を隠すように、私は両手でおおった。

でもあんなことをされたって言うのに…私は、どうすればいいって言うの?
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