ヴァニタス
「その不安に怯えながらも、絵を描くことによって生きることを切望している俺は、どうしようもない弱虫だよ」

武藤さんの言葉に涙を流したのは、私だった。

そう、か…。

そう、だったんだ…。

だから、自殺をしようとした私を止めたんだ…。

死にたいと口にした私に、武藤さんは涙を流して、私に生きることを切望した。

それらのことは、武藤さんが生きることを切望していたからだった。

病気と闘って、副作用に苦しんで、再発の恐怖に怯えながらも、武藤さんは生きることを切望していた。

私に死んで欲しくないと泣いたのも、私に生きることを切望したのも…自分がそうだったから。

だから、私に生きることを強く言ったんだ…。
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