ヴァニタス
美味しいと言って食べてくれたご飯は、武藤さんは何も言わないで食べるようになった。

必要な時は会話をするけど、それ以上の会話は交わさない。

あの家に武藤さんと2人でいることが怖くて、私はご飯の後片づけが終わるとすぐに家を出て、ここで日が暮れるまでの時間を過ごしている。

私は、武藤さんに嫌われてしまったのだろうか?

それとも、私に弱虫だと言われるのが怖いからなのだろうか?

「――私が武藤さんのことを弱虫だなんて思う訳ないじゃない…」

私の独り言は、誰にも聞いてもらえない。

「あなたはムトウの何を知っていて、そんなことが言えるの?」

その声に、私は視線を向けた。

「クロエさん…」

彼女の登場に驚いている私に、クロエさんは頭を下げると私の隣に腰を下ろした。
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