ヴァニタス
そのせいもあってか、家につくまでの時間がずいぶんと長かったような気がする。

好きな人と会話がないと言うのは、こんなにも寂しいことなんだ。

これも、私が生きているからこそ知ったことだ。

武藤さんと話がしたい。

武藤さんと笑いたい。

そのためには、私は何をすればいいの?

何をすれば、私と武藤さんとの間にある距離は埋まるの?

そんなことを思う私は、こんなにも欲張りでわがままな性格だったなんて…。

自分でも気づかなかった性格に、私は少し戸惑った。

もしあの時死んでいたら、私は最後まで自分の性格に気づかないままだった。

先に家の中に入った武藤さんの後を追うように、私も家の中に足を踏み入れた。
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