ヴァニタス
果南の告白
部屋に漂うのは、油絵の具の匂い。

鉛筆の下書きを終えたキャンバスに彩られるのは、油絵の具の色だ。

その筆の持ち主である武藤さんの背中を見つめている私は、どんな顔で彼を見つめているのだろう?

鏡がないから、自分がどんな顔をしているかなんてわかる訳がない。

もしかしたら武藤さんのことを真剣に見つめているのかも知れない。

それとも、悲しい顔で武藤さんのことを見つめているのかも知れない。

あの日――私が武藤さんの生い立ちを知った日以来、武藤さんは私を避けることをやめた。

だけどそれは表面的なところだけで、裏面――つまり、私との心の距離はまだ離れたままだ。

武藤さんとの心の距離は、どうすればいいのですか?

どうすれば、この心の距離は縮まるのですか?
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