ヴァニタス
「そう言っている私も、まだ日が浅いんだけどね」

クロエさんはフフッと笑いながら言った。

私たちは入口に置いてあるカゴを手に持つと、店内を歩き始めた。

「クロエさんは、どうしてこの町にいるんですか?」

私はクロエさんに聞いた。

「あら、それはどう言う意味かしら?」

聞き返してきたクロエさんに、
「その…クロエさんは武藤さんのことを心配しているのかな、って」
と、私は質問の意味を言った。

「そうね、あなたの言う通り、私はムトウのことを心配しているわ」

そう言ったクロエさんに、私は改めて彼女が武藤さんのマネージャーをしていたんだと知らされた。

「ムトウは、元気にしてるかしら?」

そう聞いてきたクロエさんに、
「元気です。

病気だとは思えないくらいに、再発を押さえるために薬を飲んでいるとは思えないくらいに、武藤さんは元気です」
と、私は答えた。
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