ヴァニタス
「――ッ…」

目の奥が熱くなったような気がして、私はクロエさんから目をそらすようにうつむいた。

「あなたは悪くないわ」

クロエさんが言った。

「ムトウのプライドがそうさせたんだから、あなたは悪くない」

彼女は私を慰めるように言ったつもりなのかも知れないけど、私には傷つけられたような気がした。

「プライドって、何なのですか?」

そう聞き返した私に、
「外でお話をしましょう?」

クロエさんが言った。

私は、自分たちが今スーパーマーケットの店内にいることを思い出した。


スーパーマーケットでの買い物を終えると、クロエさんと肩を並べて歩いた。

「さっきの話なんだけどね」

話を切り出してきたクロエさんに、私は先ほどまでのスーパーマーケットでの会話を思い出した。
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