ヴァニタス
「あなたはムトウに命を助けられたって、この前言っていたじゃない。

ムトウが自分を止めてくれたから自分は今を生きているんだって、あなたはそう言っていたじゃない。

なのに、今どうしてそんなことを言うの?

ムトウに止めて欲しくなかった、放って置いて欲しかったなんて、どうしてそんなひどいことを言うの?

この前と言っていることが逆じゃないの」

クロエさんの言葉が胸に刺さって痛い。

「確かに、言いました…」

私は呟くような声でクロエさんに言った。

「私が生きているのは武藤さんのおかげだって、武藤さんが止めてくれたから命を手放さないで済んだって…そう、言いました。

だけど…私は、どうすればいいのかわからないんです…」

言い終えた瞬間、クロエさんの顔がぼやけて見えた。
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