ヴァニタス
武藤さんが生きた証をこの世に残したい。

私と武藤さんが愛しあった形をこの世に残したい。

生きた証は武藤さんが描いた絵だけじゃなくて、武藤さんが生きた形として私は彼との子供が欲しかった。

そう思う私は、欲張りなのかも知れない。

武藤さんが私の方に向かって手を伸ばしてきた。

伸ばした手は私の頬に触れると、
「――ッ…」

唇が重なった。

唇が離れると、
「果南ちゃんのことが好きだから抱くんだよ?」

武藤さんが言った。

「はい、わかっています…」

私だって武藤さんのことが好きだから、あなたに抱かれる覚悟があるんです。

「今なら“やめて”って言うことができるよ?

そしたら、お互いのためにも引き返すことができるから」
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