ヴァニタス
私は首を横に振ると、
「引き返しません」
と、言った。

「武藤さんに抱かれる覚悟はできています。

私はあなたのことが好きだから、あなたに抱かれるんです」

言い終わった私の躰を武藤さんは抱きしめた。

私は彼の背中に両手を回した。

「もう、果南ちゃんの言うことを聞かないからね?」

「はい」

「果南ちゃんが“やめて”って言っても、俺はやめないからね?」

「はい」

「果南ちゃん」

武藤さんが私の名前を呼んで、私の顔を覗き込んできた。

「――好きだよ」

「――私もです…」

武藤さんの唇が私の唇をふさいだ瞬間、彼のぬくもりを刻むように私は目を閉じた。
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