ヴァニタス
“初めて”だと言ってしまった…。

“初めて”だと宣言してしまった…。

私、今すごく恥ずかしいです…。

と言うか、それ以前に私は一体何の話をしているのよ…。

武藤さんの目をまともに見ることができなくて、私は彼から目をそらすようにうつむいた。

「――そう言うことね」

武藤さんがそう呟いたのと同時に、それまで私の頬に触れていた手があごに降りてきた。

骨張った指が私のあごをさわったと思ったら、クイッと上を向かされた。

「――あっ…」

武藤さんと目があった。

「果南ちゃんの初めてが俺のものになるんだったら、俺は嬉しいよ」

武藤さんはそう言って、また私と唇を重ねた。
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