ヴァニタス
武藤さんの唇が私の額に落ちてきた。

もう武藤さんを離したくない。

この時間が永遠に続いて欲しいと、私は思った。

だけど、朝は必ずきてしまう。

きて欲しくないと思うほど、朝がくるスピードは早くなる。

だから、一生忘れないことを約束するの。

好きな人に抱かれて、好きな人を愛して、好きな人に愛されたこの夜を頭の中の記憶に刻むの。

こんなにも嬉しい出来事を覚えていたいから。

私が死んでいたら、体験できなかったこの嬉しい出来事。

一生…ううん、死んだとしても絶対に忘れない。

好きな人の腕の中で、好きな人のぬくもりに包まれながら、私は眠りの世界へと意識を手放した。
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