ヴァニタス
武藤さんはフフッと笑うと、
「そうだよ」
と、言った。

「果南ちゃんの自殺を止めて、果南ちゃんに道連れの約束をしたって言う訳。

今思うと、とてもおかしななれ初めだよね」

「そうですね、おかしいですね」

私たちは笑いあった。

「でも…」

武藤さんはそう言って、私を見つめた。

「あの時果南ちゃんを見かけて、果南ちゃんの自殺を止めたから、俺たちは今こうして手を繋いで歩いている訳なんだよね」

そう言った武藤さんに、
「そうですね」

私は返事をした。

「私、今生きててよかったって思っています。

武藤さんが私を助けてくれたから、私は武藤さんと手を繋いでいるんだって思っています」

続けて言った私に武藤さんは笑った。
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