ヴァニタス
コツンと、私の額に武藤さんの額が重なった。

「果南ちゃんは俺の天使だよ」

武藤さんが言った。

「その天使に出会えて、恋をして、今こうして手を繋いでいる。

こんな嬉しいことは他にないかも知れない」

「――武藤さん…」

私は武藤さんの名前を呼ぶと、自分から彼を抱きしめた。

「私が天使なら、武藤さんは神様だと思います」

そう言った私に、
「俺が神様って、どうしてそんなことを思うの?」

武藤さんは聞き返してきた。

「武藤さんは私が死ぬことを止めてくれたから。

あの時あなたが止めてくれなかったら、私はこうして武藤さんのことを抱きしめていません」

そう答えた私に、
「そんなことを言われて、抱きしめない男がどこにいる?」

武藤さんは私の背中に両手を回した。
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