ヴァニタス
私は彼と目線をあわせるように、その場にしゃがんだ。

「武藤さん!

武藤さん!」

「――うっ…うっ、ぶっ!」

地面に鮮血が飛び散った。

武藤さんが血を吐いたのだ。

「武藤さん!」

私は武藤さんの名前を叫んだ。

武藤さんは苦しそうに手で胸を押さえ、苦しそうに呼吸をしている。

彼の口の周りは、さっき吐き出した血で真っ赤に染まっている。

「武藤さん!」

「――果南…ちゃ、ん…」

名前を呼んだ私に答えるように、武藤さんが私の名前を呼んだ。
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