ヴァニタス
その声に、私の躰が震えた。

ウソ、でしょ…?

恐る恐る声がした方へ視線を向けると、
「――南部、さん…」

悪魔が、私たちの目の前にいた。

私の見間違いであって欲しいと思った。

だって悪魔は、警察に捕まったはずでしょう?

そう思った私の頭の中を呼んだと言うように、
「警察のヤツらはバカなものだな」

悪魔がバカにするように笑いながら言った。

「わずかな取調と厳重注意で僕を釈放してくれたよ」

そう言った悪魔に、私は声が出てこなかった。

「――厳重注意で済んだから、また果南ちゃんの前に現れたと言うのか…?」

そう質問をした武藤さんに、
「そうだよ、だって彼女は僕の恋人じゃないか」

悪魔が答えた。
< 257 / 350 >

この作品をシェア

pagetop