ヴァニタス
「――私は、あなたの恋人になった覚えなんかありません…」

震える声で反論した私に、
「僕たちはあんなにも仲がよかったじゃないか。

誰からもうらやましがられるくらいに、僕たちは仲良くつきあっていたじゃないか」

悪魔が言い返した。

自分にとって都合のいい勘違いに、私は声を出すことができなかった。

「――仲良くって、果南ちゃんとたった一言話をしただけじゃないか…。

なのに、何でそれを恋人になったと勝手に勘違いをした…?」

そう言った武藤さんに、
「果南、さっきから僕に話しかけているこの男は一体誰なんだ?

そのうえ、なれなれしく君の躰にこの男の手が回っている。

この男は何者なんだ?」

悪魔がイライラした口調で言い返してきた。
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