ヴァニタス
悪魔は自分の顔を挟むように両手で包んだ。

「――何でそんなヤツと恋人になったんだよ…。

僕が恋人じゃなかったのかよ…。

僕とつきあっていたんじゃなかったのかよ…」

悪魔は青い顔で、今にも泣きそうな声で呟いている。

「何で別れるなんて言ったんだよ…?

僕たちはつきあっていたんだろう…?

誰からもうらやましがられるくらいに、僕たちはあんなにも仲が良かったじゃないか…」

悪魔はブツブツと呟きながら、ズボンのポケットから何かを取り出した。

取り出したのは、折り畳み式のナイフだった。

――それで何をするって言うの…?

震えている私に、
「君に勝手な勘違いをされて、君から理不尽なストーカーを受けた果南ちゃんの気持ちは考えたことがないんだな」

武藤さんが言った。
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