ヴァニタス
「今回は南部の精神鑑定の結果について、少し報告をしにやってきました」

中年男が言った。

私の心臓がドキッ…と鳴る。

その音に気づいたと言うように、武藤さんは私の手をギュッと握った。

「精神鑑定の結果、異常をきたしているため…」

「不起訴、と言うことですか?」

中年男の言葉をさえぎるように、武藤さんが言った。

「ええ、残念な結果ですが」

中年男はやれやれと言うように息を吐いた。

「だけど、あなたたちの前に彼はもう2度と現れません」

そう言った中年男に、
「えっ?」

私たちは驚いて聞き返した。
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