ヴァニタス
私は炒飯を口に入れると、水で流し込んだ。

「知りたいんだから教えてよ」

「はいはい、わかりました」

あまりにもしつこい武藤さんに私は息を吐くと、
「半年ほどですけど、IT関係の仕事をしていました」

質問に答えた。

「えっ、IT?

果南ちゃんって、頭いいんだね」

世の中の全てが「IT=頭がいい」とは限らない。

「就活で唯一内定をもらったところがIT関係の会社だったんです」

私は勤めていた理由を答えた。

「へえ、そうだったんだ。

でも勤めてから半年で辞めちゃったってことは…やっぱり、よくある仕事がキツかったとかそんな理由なの?」

私がその質問にすぐ答えることができなかったのは、歯にご飯が挟まっていたからだと思って欲しかった。
< 45 / 350 >

この作品をシェア

pagetop