ヴァニタス
それまで暗かったリビングが一気に明るくなった。

「――きゃっ!」

明るくなったとたん、私は驚いた。

私がさっきまで座っていたソファーにもたれかかるようにして寝ていたのは、
「――武藤さん?」

武藤さんだった。

寝る時は武藤さんはソファーで、私は床のうえで毛布をふとん代わりにして寝ていた。

床のうえで寝ることを望んだのは私だった。

武藤さんは女が床で寝るのはよくないからとソファーで寝ることを勧めたけど、私はそれを断った。

私は武藤さんの家政婦として、この家に住んでいるのだ。

断り続ける私に武藤さんはあきらめたのか、ソファーのうえで横になったのだった。
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