ヴァニタス
「それも…それも、わかってます…。

わかってるから、死のうと…」

「何で?

何で死のうとするんだよ?」

面倒なことになったと、私は思った。

周りを確認してから――いや、さっさとここから飛び降りて死ねばよかった。

そうすれば、呼び止められて自殺を止められることなんてなかったのに。

私は彼から逃げるように背中を向けた。

「待て!

話はまだ終わってない!」

腕を強くつかまれた。

「離してください!」

つかまれた腕を振り払おうとするけど、男の強い力ではかなわない。
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