ヴァニタス
わかってる。

男の強い力にはかなわない。

どんなに腕を振り払っても、必ず追いかけてくる。

必ず居場所を突き止めて、前に現れてくる。

逃げても逃げても、必ず追いかけて、つかまえようとする。

「離して!

離して!」

「離したら飛び降りるつもりだろうが!」

腕を振り払おうと抵抗する私とそれを止めようと必死になっている彼。

傍から見たらケンカしているように見えるかも知れない。

「離すから理由を聞く!

何があったか話をしてくれ!」

「嫌ッ!

話したらバラすくせに!

私がここにいることを教えるくせに!」
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