ヴァニタス
「――ッ、くっ…」

電車に乗っている間、私の涙は止まらなかった。

大切な家族と大好きな友人と連絡を絶って、お世話になった人に突然お別れを告げて…いつかはあることかも知れないけど、こんな形で彼らから離れたくなかった。

でも、これで南部から――悪魔から逃げることができたんだと、泣きながら何度も自分に言い聞かせた。

新しい町に引っ越したら住むところと働くところを探そう。

それが落ち着いたら携帯電話を新しく契約して、家族と友人に電話しよう。

そう計画を立てると、涙が止まった。

だけど、悪魔は私を追ってきた。
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