ヴァニタス
マンションの前に見覚えのある人物を見つけた。

その人物は私に気づくと、
「――果南」

口は笑っているけど、目は笑っていない悪魔。

私の手から、お惣菜が入った袋が滑り落ちた。

何で?

何で、ここにいるの?

私…誰にも居場所を教えていないのに…。

震えが、躰を襲った。

「探したんだ」

悪魔が言った。

探したって、どうやって?

どうやって探して、私を見つけたの?

悪魔が私のところへ歩み寄ろうとする。

「――こないで!」

私は悪魔に向かって叫んだ。
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