ヴァニタス
「果南、何で別れようなんて言ったんだ?

僕がどれだけ君を探したと思ってるの?」

別れようって、誰が言ったの?

どうして、私が別れたって言ったことになってるの?

「私、あなたと別れるなんて…言った覚え、ない…」

呟くように、悪魔に向かって反論した。

そもそも、私と悪魔はつきあっていない。

なのに悪魔は私とつきあっていると思い込み、恋人と勘違いしている。

「果南…。

果南…」

悪魔が私の腕をつかんできた。

「嫌ッ、離してッ!」

私はつかんできた悪魔の腕を振り払った。

振り払ったとたん、頬に衝撃が走った。
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