ヴァニタス
やっとなれた再就職先に辞表を提出して、住んでいたマンションを解約すると、また逃げ出した。

新しい再就職先を見つけても、悪魔は私の前に現れる。

新しく住むところを見つけても、悪魔は私の前に現れる。

どんなに遠くへ行っても、どこへ行っても、悪魔は私の前に現れる。

どこまで逃げても、悪魔は必ず私の前に現れる。

現れては、暴力を振るった。

言葉なんか聞いてくれない。

躰が痛い…。

心が痛い…。

「――もうヤだ…!」

流れる涙は痛いのか、悲しいのか、悔しいのか…もうよくわからなかった。
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