ヴァニタス
「――ッ、バカだよォ…!」

武藤さんは、泣きながら私を抱きしめた。

強い力で抱きしめられたせいで、傷がチクリと痛んだ。

「何で言わなかったんだよ…!

何で相談しようとしなかったんだよ…!

ストーカーされていたならストーカーされていたって、何で言わなかったんだよ…!」

私を強く抱きしめながら、武藤さんは泣いた。

「何で誰にも相談しようとしなかったんだよ…!

何で警察に話そうとしなかったんだよ…!」

「だって…」

武藤さんが泣くから、私まで涙が出てきた。

「警察に話したって、相手にしてくれないと思ったから…」

泣きながら呟くように言い訳をした私に、
「何で勝手に決めつけるんだ…!

警察は相手にしてくれないなんて、誰がそんなことを言ったんだ…!」

武藤さんは泣きながら言った。
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