ヴァニタス
私は首を横に振ると、
「わかりません。

でも、その人はこの町にいると思います。

この町にいて、私が住んでいるところを探し回っているんじゃないかと思います」

女性の質問に答えた。

女性はサラサラと、紙のうえでボールペンを動かした。

中年男は首を縦に振ってうなずくと、
「わかりました。

当分は、この町の見回りを強化いたしましょう。

特にあなたの家の周りを集中的に。

もしかしたら、彼はまたあなたの前に現れるかも知れない」
と、言った。

その瞬間、私は武藤さんの言う通り、警察へ相談しに行ってよかったと思った。

警察は相手にしてくれないと言う私の考えが払拭された。
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