スイートナイト
役所から離婚届をもらってくると、そこに自分の名前を書いて印鑑を押した。

メモ用紙に“さようなら”と一言書くと、離婚届と一緒にテーブルのうえに置いた。

それから荷物をまとめると、家を後にした。

行き先はもう決まっている。

「突然きたら、驚かれちゃうかな…」

そんなことを呟きながら、私は向かった。


ピーンポーン

「はい」

チャイムを鳴らすと、出てきたのは巽だった。

声の様子からして見ると、寝起きだったらしい。

「静希」

「…きちゃった」

私は呟くように言った。

「何かあったかは知らないけど、中に入ろうか?」

巽に促され、私は家の中に入った。
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