スイートナイト
「何か今さらながら緊張してきた…」

ソファーに腰を下ろした私に、
「いよいよご対面だね」

静香が答えた。

ドキドキと心臓がうるさい私とは対照的に、静香は落ち着いている。

当たり前か…。

旦那さんはこの店の元ナンバーワンホストだし、静香も何度か来店していることだろうし…落ち着いていて当たり前か。

特に何にもないまま学校生活を過ごし、大学卒業と同時に結婚して専業主婦をやっている私とは違うんだと思った。

長い間つきあっている友達のはずなのに、静香を別世界の人のように感じてしまった。

劣等感に打ちひしがれている私に、
「お待たせしました、香坂巽（ｺｳｻｶﾀﾂﾐ）です」

声優さんみたいないい声に顔をあげると、白に近い金色の髪の青年だった。

背は１８０以上もあるのに躰つきは華奢で、適度に着崩した黒のストライプのスーツがよく似合っている。
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