スイートナイト
「ったく…」

巽はやれやれと言うように息を吐いた。

「あ、あのさ、巽」

私は巽の名前を呼んだ。

「私、雫ちゃんに心が動いてないからね?

頼もしいなとは思ったけど、特に動いてないから」

私は巽の腕に自分の手を置いた。

「――静希…」

耳元で、巽が私の名前をささやいた。

「静希が俺のところに戻ってきてくれて、よかった」

巽の声が震えているのがわかった。

「――私も…私も巽のところに戻ることができて、ホッとしてる」

言い終えると、巽に顔を向けた。
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