スイートナイト
「桜さん、この方は…」

巽くんが静香に聞く。

「ああ、彼女はあたしの大学の時の友達の」

「澤井静希(サワイシズキ)です」

静香に名前を言われる前に、私は自分の名前を言った。

「澤井静希さん、ですね。

桜さんと名前がよく似ているうえに、桜さんと同じ美人さんなんですね」

巽くんは微笑んだ。

その微笑みに、私の心臓はドキッと鳴る。

社交辞令よ、社交辞令。

お世辞よ、お世辞。

きっと、他のお客さんにも同じことを言ってるわ。

でなきゃ、ナンバーワンになんかなれる訳ないじゃない。

ドキドキとうるさい心臓に、私は何度も言い聞かせた。
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