スイートナイト

彼に傾いて行く心

キッチンの、お菓子が入っている棚を開けると、ミルクキャンディが入っていた。

巽くんに奢ってもらった、あのミルクキャンディだ。

あれから2週間が経った。

他のお菓子は全部食べたけど、巽くんが奢ってくれたミルクキャンディは食べることができなかった。

スマートフォンに、巽くんからの電話やメールは届くことがなかった。

「仕方ないよね…」

ナンバーワンホストの彼は忙しいのだ。

テレビの中の芸能人が話し相手の専業主婦の私とは違うのだ。

ミルクキャンディは賞味期限がくる前に早く食べなきゃいけない。

巽くんは忙しいから、電話やメールを待ってなくてもいい。

そう思ってミルクキャンディを手に取って見るけど…やっぱりダメだ、もったいなくて食べれない。

何がもったいないのかは自分でもよくわからない。

なくなったらコンビニへ買いに行けばいいだけの話なのに。

私はミルクキャンディから手を離すと、棚を閉めた。
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