夜明けのコーヒーには 早すぎる
 シロさんから聞いた?
 しかし、それは―
 「どういう状況で聞いたの?」
 クロは頭に浮かんだ疑問を、口に出していた。
 我ながら細かい性格だと思うが、一度気になってしまうと、そのことが頭から離れない。
 平常時ならば、気弱な性格の為、口に出すことは無いが、酩酊すると気分が高揚して、つい口に出してしまうようだ。
 ―いや、違うか。
 カトリさんの持つ独特の雰囲気が、自分の口を軽くさせているのかも知れない。
 クロがそんなことを考えながらユラを見ていると、ユラが口を開いた。
 「昨日、皆で昼食を摂った時です。わたしとシロさんを含め、4人で昼を食べていた時に、たまたまそういう話の流れになりまして―」ユラは顎を擦りつつ、その時のことを思い返す。「シロさんは、恋人はいないと、はっきり言い切りました。ただ―」
 「ただ、何?」
 「はい。少し言い難いですが、恋人はいないと答えたシロさんには、当然の如く想い人の有無の質問がされました。それに対し、シロさんは含み笑いをして誤魔化すという対応。その場にいた誰もが、シロさんに懸想する相手がいるのを感じたと思います。時間があれば聞き出せたのかも知れませんが、昨日は休憩時間の都合上不可能でした」
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