夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「と言いましても、シロさんの好いてる方が主任だと判らない限り、告白するのは危険なことも事実。そこで、一つ妥協案があります」
 ユラは人差し指を立てて言った。
 「な、何だい?それは」
 「まあ、良くある手段ですが、シロさんと交友を結ばれてはどうでしょうか?」
 「交友。友達か」
 「そうです。そもそも、素性の知れぬ人から想いを告げられても、大体はノーです。今回は、会社の部下と上司という関係があるものの、それ以上親しくもない。やはり、ノーです。先ずは、気軽に話せる仲を目指すのはどうでしょうか?乗り掛かった船ですから、わたしが交友の場を作りましょう」
 ユラは胸を張って、自分の胸を叩いた。
 いつものユラからは、想像も出来ない様子に戸惑いながらも、「た、頼めるかい」とクロは言った。
 「喜んで」
 ユラは破顔して頷いた。
 「しかし、良くしてもらって、こんなこと言うのは失礼だけど、カトリさんって意外に面倒見が良いね」
 「少しは、余裕が出てきたのかも知れません。人生に」
 「深いね。何かあったの?」
 「ええ。ある人に世話になったお陰で、わたしにダーリンが出来ましたから」
 「だ、ダーリン!」
 クロはお猪口を落としそうになり、咄嗟に左手を添える。
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