夜明けのコーヒーには 早すぎる
 実は、シロの狙いはそこにあった。昼食は、ユラと二人で話す為の方便である。
 ユラは笊(ざる)蕎麦を二人前注文し、シロは天婦羅(てんぷら)蕎麦を注文した。
 「先輩」シロが、お茶を一口啜ってから切り出す。「昨夜は主任と、何をなさっていたのですか?」
 「そうだねー」ユラはお茶を啜る。「別段、呑んでただけだよ」
 「お二人で?」
 「うん。二人だった」
 「そうですか」
 シロは眼を細めて、ユラを見据えた。
 それに気付いたユラは、「気になるの?」と言って破顔する。
 「それはなりますよ!だって、先輩と主任が二人で呑むなんて、今まで無かったじゃないですか!」
 シロは身を乗り出し、ユラに食らいつかんばかりに言った。
 流石にユラもたじろぎ、「そ、そういえば、そうだね」と微苦笑をして、上半身を逸らした。
 そこに、注文した蕎麦が運ばれてくる。
 ユラは、天の助けとばかりに、「ささっ、食べよたべよ」と言って、シロに割り箸を手渡した。
 「わかりました」
 シロはお腹が空いていたのか、さっきの勢いは何処へやら、蕎麦を啜り出した。
 ユラは安堵の息を吐き、笊(ざる)蕎麦を啜り始める。
 実はユラ、自他共に認める麺好きで、略毎日何かしら麺類を食べている。
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