夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「先輩。主任も先輩に婚約者がいることを?」
 「勿論」ユラは頷く。「知ってるよ。昨夜話した」
 「なあんだ」シロは見るみる内に破顔する。「では、本当に主任とは何でも無かったんですね」
 シロはムフフフと含み笑いしながら、梅酒を呷った。
 気分が良くなったのだろう。梅酒を追加して、摘まみも適当に注文している。
 これはもしかして、もしかするかも、と思い、「シロさんは、主任のことが好きみたいだね」とユラは言ってみた。
 シロがどう反応するか待っていると、はたして、「す、好きと言いますか、尊敬してると言いますか、いえっ、好きと言っても、男女のそれという訳ではなく、飽くまで、尊敬出来る上司として好意を持っているのですよ!」と、しどろもどろになりながら、シロは答えた。
 「解りやすいね。シロさんは」ユラは眼を細めて、シロを見据える。「主任のどこがいいの?」
 「解りません」
 シロは、ぴしゃりと言い切った。
 実は照れているだけなのだが、ユラは気付かない。
 「そうなんだ。でも好き、か。そういうものなのかもね」
 ユラは、うんうん頷きながら、梅酒を呷る。
 「ところで先輩、話しを戻しますが、主任との話というのは何だったのですか?」
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