夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「そ、それは、そうですけど―」
 シロの語尾は小さくなっていき、最後の方は聞き取れない。何やら、ゴニョゴニョと言っている。
 「だったら、駄目元で想いを告げてはどうかな?やるだけやらないで、後で後悔するのは惨めなもんさね」
 「女性からですか?」
 「そこは関係ないね。男だから女だからと、自分に言い訳してるだけだよ。女性が積極的に迫って、何が悪い?」
 「そ、それはそうですが、やっぱり恐いです」
 「まあ、そうだろうね。そこで、一つ提案がある」
 「提案、ですか?」
 「ああ。明日、主任との食事をセッティングしよう。そこで、取り敢えず交友を結べばいい。後は、少しずつ仲良くなるなり、大胆に迫るなり、好きに出来る筈だ」
 「あ、明日ですか!こ、心の準備が―」
 と慌てふためくシロを遮り、「食事だけだよ。何の準備がいるというの?」と、ユラはさらりと言ってのけた。
 「でも、いきなり二人きりなんて困ります。間が持ちませんよ」
 「それもそうか。うーん。どうするかね」
 ユラは頭を悩ませる。
 すると、シロは怖ずおずと、「先輩が、一緒に来て下さいませんか?」と言った。身長差も相俟って、ユラを見上げる形になる。
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