夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「ああ。優しく見守るという、無言のプレッシャーを感じていたんだろう?」
 「それは―」シロは何か言い返そうと口を開いたが、それ以上言葉が続かずに、項垂れる様に頷く。「そうかも知れない、です」
 「良くあることだよ。現に、わたしの両親もそうだった」
 「先輩のご両親も、ですか?」
 「そう。優しく接される程、優しくされる方は重荷に感じることがある。わたしの父は、温和な性格だけど、頑固でもあった。頭ごなしに否定することはしないけど、自分の考えが正しいと信じ、わたしに押し付け様とする。考えるだけで、おぞましい。頭ごなしに言ってくれた方が、まだ増しだ」
 ユラの眼が鋭くなり、虚空を睨んでいる。
 「先輩」
 シロは、いつもと違うユラの様子に、怖ずおずとしながら声を掛けた。
 「ん?ああ。すまない。話が逸れてしまった」
 「いえ、いいんです。多分、わたしも先輩の様に、感じていたのかも知れません」
 「そうかもね。優しい者同士だと、親子であっても行き違いが起こる。いや、もしかしたら、親子だからかも知れない」
 「親子だから?」
 「ああ。親子という関係を、過信してしまう結果なのかも知れないね」
 「そう、ですね。わたしも、そう思います」
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