夜明けのコーヒーには 早すぎる
 会社が終わり、ユラとシロとクロの三人は、クロの行きつけの店にやって来た。
 店に入ると、和服を着こなした三十代ぐらいの女性が、三人を奥の座敷席へと案内してくれる。
 ユラは、クロとシロを向かい合うように座らせ、シロの隣りに腰を下ろした。
 それぞれの好きなお酒と、湯豆腐を注文する。
 暫くすると、ビール、日本酒、梅酒の順にお酒が届けられた。
 「主任」
 シロは、颯(さっ)とクロのグラスにビールを注ぐ。
 「あ、ありがとう」
 クロは、少し照れながら礼を言った。
 それを横眼で見つつ、ユラは自分でお猪口に日本酒を注ぐ。
 「お疲れ様」
 三人は、互いの容器を軽く当てた。
 カンッ
 という小気味良い音が、お酒の旨さを増してくれる。
 「しかし、珍しい顔触れが集まったね」
 「そ、そうですね」
 と、そこで会話が途切れた。
 シロとクロは、互いに照れているらしい。
 やれやれだね。
 ユラは心の中でそう呟き、「そういえば、シロさんと主任って、お互いのことをどれくらい知ってますか?」と言った。
 「どれくらいと言っても―」クロは首を傾げる。「そんなには知らない、かな」
 「わたしも、会社の中での主任しか知りません」
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