夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「いいですね。わたしもお付き合いします」
 シロは破顔して言った。
 「それじゃあ、わたしはここで」
 ユラは破顔一笑すると、敬礼の真似をした。
 「えっ、カトリさん帰っちゃうの?」
 「はい。もう、わたしの役目は終わりましたから」
 「で、でも、先輩―」
 「いいからいいから。それに、実はこの後、別の人達と合流するんだ」
 「そう、ですか」
 「なら、仕方ない、か」
 シロとクロは、同じ様に肩を落とす。
 それを見て、ユラは軽く首を竦めると、踵を返して立ち去っていった。
 後には、シロとクロが二人きりで残される。
 「もう少しだけ、一緒に呑まない?」
 クロは言った。少し声が震えている。
 「はい」
 シロは小さく頷くと、クロに微笑んだ。
 二人は肩を並べると、ユラとは反対方向に歩いていった。

       ※
 「ってな感じだった訳ですよ。ここ数日は」
 ユラさんは、クロ氏とシロさんのことを一通り話し終え、梅酒を呷った。
 場所は「ロンド」、ぼくは、ヒロコとユラさんと向かい合う形で、お猪口を傾けている。
 他にお客はいない。
 実は、今日は「ロンド」の定休日なのだが、無理を言って使わしてもらっているのである。理由は後で語るとして、今はヒロコとユラさんとの会話に戻ろう。
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