夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「成る程。恋のキューピットってやつですか」
 「そうなりますかねー」
 ユラさんは頭を掻きかき、タコわさを口に放り込む。
 「若いっていいわねー」
 ヒロコはうんうん頷いている。
 「若いって言えば、ユリさんにこんなことを相談されまして―」
 ぼくは、今日の喫茶店でのことを簡潔に説明した。
 「ユリが、人から恋愛相談を受けるとは、ね」
 「やはり、姉妹ってことかな」
 ヒロコは、揶揄する様に言って破顔した。
 「ふむ。話を聞いていると、近頃の男性は受け身になっているようですね」
 「それは、思いますおもいます」
 ユラさんはうんうんと頷く。
 「でも、クロさんって人、何だか女性を少し怖がっている様に感じるね」
 「どういうことですか?ヒロコ」
 「いや、何の根拠も無く、只思い付いただけなんだけど―」ヒロコは、日本酒を一口呑んだ。「クロさんは、過去に女性に酷い眼に遭わされた経験があるのではないかな」
 「どうですか?ユラさん」
 「いえ」ユラさんは首を傾げる。「そんな話は聞いてないです。でも、主任とはそこまで深い話をする仲ではありませんから、可能性はあると思います」
 「そうですか。では、仮に女性に対するトラウマがあったとして考えましょうか」
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