夜明けのコーヒーには 早すぎる
 ビールを胃に流し込むスイセイの前に、切り分けられたケーキが置かれる。
 「いただきます」
 ケーキを口に入れた瞬間、スイセイは思わず噎(む)せてしまった。
 「こ、これは?」
 スイセイはユラを見やる。
 ユラは破顔一笑して、「ブランデーケーキです」と言って、胸を張った。
 「ど、道理で」
 ビールよりも、アルコールが高そうな訳だ。
 ケーキを食べ終えると、ヒロコの部屋に河岸を変えることになった。
 いくら定休日とはいえ、余り汚すと後片付けが大変だ。
 だったら、何故、最初からヒロコの部屋でやらないのか?
 と、スイセイがユラに尋ねたところ、「ダーリンが驚くと思って―へへっ」ユラは、悪戯がばれた子供の様に照れ笑いを浮かべ、片眼を閉じてスイセイにウインクを寄越した。
 やれやれ。
 スイセイは微苦笑を浮かべ、嘆息した。

 「ロンド」を片付け終えると、四人はヒロコの部屋に移動して、再び呑み出した。
 結局、朝まで呑んで、スイセイは始発に揺られて帰宅する。
 酔い潰れて眠ってしまったユラは、ヒロコの部屋で良い夢を見てることだろう。
 ―確証はないけど。
 スイセイは電車に揺られながら、ユラが酔い潰れてからのことを思い出した。
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