夜明けのコーヒーには 早すぎる
 窓の外、流れる景色を見つめながら思考を巡らせた。
 電車が駅に着き、スイセイは電車を降りる。
 ゆっくりと帰路を歩む間も、意識は何処か遠くでユラのことを考えていた。
 自室に帰り着き、ベッドに突っ伏す。
 スイセイはそのまま、深い眠りに落ちていった。

 後日、スイセイはユラを「ロンド」に呼び出した。
 スイセイが「ロンド」に着くと、ユラは既に奥の座敷席に座っていた。梅酒を呑みながら、刺身の盛合せを突っついているのが窺える。
 ユラはスイセイを見つけると、「ダーリン。こっちこっち」と言って、手招きをした。
 周りの客の視線が、スイセイに注がれる。
 スイセイは早足で座敷席に辿り着くと、ユラの前に腰を下ろした。
 ビールを注文し、届いたビールを一気に半分程胃に流し込むと、スイセイはユラを真っ直ぐに見つめて口を開いた。
 「この間はありがとう。感謝してるよ」
 「どうしたんですか?急に改まって」
 「ユラくんが寝てしまった後、ヒロコさん達から聞いたんだ。ぼくの誕生会を開こうと言い出したのは君だって」
 「そうですか。でも、それは当然といえば当然ですよ。あの二人は、ダーリンの誕生日を知りませんから」
 「それもそうだ、ね」
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