夜明けのコーヒーには 早すぎる
肴(さかな)その八 奇遇
 「ふぁーあ」
 ユラは、アフリカで最も危険な動物といわれる河馬(かば)もかくやといった大欠伸をした。
 両目頭を右手で揉みほぐしながら、ぼんやりと、今日一日どうしようかと考える。
 週末の二連休の初日。ユラは特にこれといった用事が無かったのだ。
 取り敢えず、顔でも洗ってしゃきっとするかな。
 ユラはベッドからのそのそっと起き上がり、洗面所に向かう。
 二度、三度と冷たい水で顔を洗うと、すっきりとして頭がはっきりしてくる。
 「よしっ」
 ユラは両頬を張った。
 掛けてあるタオルを手に取り、顔を拭いて食堂に向かう。
 食堂といっても、台所も兼ねているので余り立派とはいえないが、ユラの収入では致し方無い。
 それでも、居間があり、風呂と厠(かわや)が別なのだから、文句などは無い。むしろ、こぢんまりとしていて気に入っている。
 ユラは食パンをトースターにセットして、ベーコンと卵を焼く。
 毎朝食べる、いつもの朝食だ。
 因(ちな)みに、卵を食べ過ぎるとコレステロールが溜まるといわれているが、これには否定意見も存在する。
 何でも、コレステロールが溜まる云々という説は、二十世紀初頭に草食動物である兔で実験した結果に因(よ)るものだとか。
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