夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「ふぁーあ」
 ユラはもう一度大きな欠伸をして、時計に眼をやった。
 「まだ十時か」
 そう呟いてから、テレビの番組を適当に回すが、ユラの目を引く番組は放送していない。
 バラエティなのか、ニュースなのか、よく判らない番組ばかりだ。
 ユラは嘆息してテレビを消すと、着替えを済まし、携帯電話と財布を持って家を出た。
 最近、新しく出来たレンタルビデオショップに向かう。
 品揃えが良く、何より開店セールで安い。
 映画やドラマが嫌いではなく、よく借りるユラに取っては、有難いことである。
 レンタルビデオショップに入り、最新作の棚を見やりながら店内を歩く。
 見たい作品は何作かあったが、全て貸出し中だった。
 これは流石に仕方ないな。
 ユラはそう納得しつつ、新作の棚を見やる。
 こちらの方は、貸出し中とそうでないのが半々ぐらいといったところだった。
 ユラは、何か面白そうな作品はないかとゆっくりと新作を物色していく。
 ある作品がユラの目に止まった。
 ユラがその作品を手に取ろうと、腕を伸ばした時、視界の端に自分のとは違う腕が伸びてくるのが見えた。
 「ん?」
 ユラは横に視線を移す。
 「あなたは―」
 「あらら。こんにちは」
 ユラと同じ作品に手を伸ばした人物―それはカトウヒロコであった。
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