夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「珍しいね。こんな所で会うなんて」
 ヒロコは破顔して言った。
 「そう、ですね」
 ユラもつられて、頬が緩む。
 「これ、借りるの?」
 ヒロコは、ユラが手に取ろうとした作品を取って、ユラに差し出す。
 「い、いえっ。ヒロコさんが借りて下さい。わたしはまた今度借りますから」
 「うーん。何か気が引けるなー」
 ヒロコはそう言って、腕を組み、首を傾げる。
 「気にしないで下さい。わたしは別のを借りますから―」
 「そうだ!」ヒロコはユラの言葉を遮る。「一緒に見よう」
 「しかし、ご迷惑では?」
 「いんやいんや」ヒロコは大袈裟に首を振る。「丁度、暇してたのよ。っとそれとも、何か予定があるのかい?」
 「いえ、わたしも暇を持て余しているところです」
 「なら、決まりだね」

 ―というやり取りがあり、ユラはヒロコの部屋にやって来た。
 簡素な部屋の隅には、空の酒瓶が並べられている。
 ヒロコがDVDを観る準備をしている間、ユラは所在なくヒロコの部屋を眺めるしかなかった。
 やがて、小さめのテーブルの上には、簡単な摘まみと梅酒が所狭しと置かれた。
 「昼間から酒、ですか?」
 「勿論。ユラさんは呑まないの?」
 「いえ」ユラは破顔一笑。「いただきます」
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