夜明けのコーヒーには 早すぎる
 「最近、これに凝っててね」
 ヒロコはそう言いつつ、レモンティーのペットボトルを掲げた。
 「割るの、ですか?」
 ユラは少し眉を顰(ひそ)める。
 「意外といけるよ」
 ヒロコはそう言って、梅酒をコップの半分ほど注ぐと、そこにレモンティーを注いで、ストローでかき混ぜた。
 「はい。どうぞ」
 ユラの前に、梅酒のレモンティー割りが置かれる。
 「いただきます」
 ユラはひょこっと頷く様に頭を下げると、梅酒のレモンティー割りを一口呑んだ。
 「美味い」
 ユラは思わず呟いていた。
 「でしょ?」
 ヒロコは破顔して、自分の梅酒レモンティーを作り始める。
 ―しかし、本当に美味い。
 ユラはもう一口呑んだ。
 ロックほど甘過ぎず、さっぱりしていて呑みやすい。
 これはついつい呑み過ぎてしまう部類の酒だ。
 ユラはそう考えつつ、梅酒レモンティーを呑み干した。
 「梅酒いただきます」
 ユラはそう言って、今度は自分で梅酒レモンティーを作った。
 ヒロコは「わたしがやるよ」と言ったが、ユラは丁重に断った。何事も甘え過ぎは良くない。
 ―というのは建前で、実際は自分の好みの割り方にしたかっただけなのだが、まあ今度何かお酒をプレゼントしよう。
 ユラはアクション映画を観ながら、そんなことをぼんやりと考えていた。
< 138 / 200 >

この作品をシェア

pagetop